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横浜地方裁判所 昭和36年(わ)2397号 判決

本店所在地

横浜市磯子区杉田町一四八番地

有限会社臨平商事

右代表者清算人

間辺平助

本籍

横浜市磯子区杉田町四三六番地

住居

横浜市磯子区杉田町一四八番地

旅館等経営

間辺平助

大正四年一二月二五日生

右の者等に対する出資の受入れ預り金及び金利等の取締等に関する法律違反、法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官葛西宏安出席の上審理を遂げ、次のとおり判決する。

主文

被告人有限会社臨平商事を判示第一の罪につき罰金二〇万円に、判示第二の罪につき罰金二〇〇万円に、被告人間辺平助を懲役一年六月および罰金三〇万円に処する。

但し、被告人間辺平助に対し、この裁判の確定した日から三年間、右懲役刑の執行を猶予する。被告人間辺平助が右の罰金を完納することができないときは、金一、〇〇〇円を一日に換算した期間同被告人を労役場に留置する。

訴訟費用は全部被告人両名の連帯負担とする。

理由

(罪となるべき事実)

被告人有限会社臨平商事は、昭和三二年三月一日設立され、横浜市磯子区杉田町一四八番地に本店を有し、同三五年七月二日解散するまでの間、信用貸付等の金融業を営んでいたもので、現在清算中の法人であり、被告人間辺平助は、右期間、同会社の代表取締役としてその営業全般を統括していたもので、現在同会社の清算人であるが、

第一、被告人間辺平助は被告人会社の業務に関し、高金利による貸付をせんことを企て、昭和三六年一二月二八日付起訴状別紙犯罪事実一覧表の氏名欄の記載中別紙記載の番号のものを別紙記載のとおりとするほか、右犯罪事実一覧表記載のとおり昭和三四年一月五日より同三五年四月七日までの間前後三、四四二回に亘り、いずれも前記会社において、債務者鈴木正太郎等よりの貸付申込に応じ、同人等に現金合計約六三、五七六、〇〇〇円の元本を貸付けるに際して、法定利息の外、手数料等を天引きする等の方法により、実交付元本額合計約六一、九五八、三五〇円に対し、貸付額面額合計約九九、一八一、九六〇円、但し右貸付額面額(元利合計額)を一〇ケ月均等月賦返済とする旨の契約をし、もつて法定利息が元本一〇〇円に対し日歩三〇銭の割合による法定利息合計約三四、五八五、二八二円を約二、六三八、六二八円超過する元本一〇〇円に対し日歩三二銭一毛ないし三五銭三毛の利息の契約をし、

第二、被告人間辺平助は被告人会社の業務に関し法人税を免れようと企て、昭和三四年四月一日より同三五年三月三一日までの事業年度において、同会社の真実の所得金額が少くとも一八、七〇三、〇五〇円でこれに対する法人税額が少くとも七、〇〇七、一四〇円であつたのに、貸付金の一部のみを公表帳簿に計上し、よつて生ずる収入利息による利益の除外を行うなどの所為によつて、その所得金額を減少せしめた決算をなし、これに基づき法定の法人税確定申告期限後である昭和三五年七月一三日に至り、同市南区所在の横浜南税務署において、同署長に対し、右事業年度の所得金額は赤字二〇〇、〇〇七円でこれに対する法人税額は零であつた旨の虚偽の確定申告書を提出する等の不正行為により、少くともその差額七、〇〇七、一四〇円の法人税を免れたものである。

(証拠の標目)

右の事実は

判示全事実につき

一、被告人間辺平助の当公判廷における供述

判示冒頭の事実につき

一、有限会社臨平商事に関する昭和四五年一一月一一日付登記簿謄本

判示冒頭および判示第一の事実につき

一、被告人間辺平助の検察官に対する昭和三六年一二月一一日付および同月二一日付各供述調書

判示第一の事実につき

一、菊地武利の当公判廷における供述

一、昭和三六年(わ)第二、三九七号事件第二回公判調書中被告人会社代表者間辺平助および被告人間辺平助の陳述部分

一、同事件第八回公判調書および同第一三回公判調書中被告人会社代表者被告人間辺平助の各供述部分

一、被告人間辺平助の司法警察員に対する昭和三五年五月一三日付、同年六月七日付および同月九日付各供述調書

一、被告人間辺平助の検察官に対する昭和三六年一二月一一日付および同月二一日付各供述調書

一、被告人間辺平助の保安課長杉山福司に対する答申書三通

一、右事件第三回公判調書中証人須田喜市郎および同大平與吉の各供述部分

一、同事件第四回公判調書中証人岡田熊吉および同宮本憲の各供述部分

一、同事件第五回公判調書中証人菊地武利の供述部分

一、同事件第七回公判調書中証人奥山喜作、同奥村栄助および同長島艶吉の各供述部分

一、同事件第八回公判調書中証人浅見和昭、同木内豊秋、同吉岡さかえおよび同井内すぎの各供述部分

一、同事件第九回公判調書中証人竹下宇三子、同松本初子、同中村君江、同丹野長三、同山口ヒサ子および同深谷良子の各供述部分

一、同事件第一〇回公判調書中証人高橋こと渡辺ツルの供述部分

一、同事件第一一回公判調書中証人竹下美恵子および同菊地武利の各供述部分

一、岡田熊吉の昭和三五年五月一三日付答申書および司法警察員に対する同月四日付、六日付各供述調書

一、天野雄、吉川まさ子、安斉エミ子、斎藤進、須藤和子、江幡敏夫、荒畑ハツ、久野銀次郎、小野嘉十郎、志岐金次、米山庫之助、斎藤道夫、中島雄二郎、佐藤和子、權瓶勝吉、紺幸男、鈴木徳一、遠藤竹治郎、多田優、山内英雄、吉川音蔵、間宮春子、須田ツセ子の司法警察員に対する各供述調書

一、奥村栄助、大平與吉、宮本憲、長島艶吉、鈴木唯義、間宮春子、松下たい(二通)、坂巻はる、吉川梅子、高橋幸次郎、依田隆、岡本文子、高木千恵子、樋口華子、及川キミ、富士原テルヨ、岩脇清子、太田しず子、長沢初江、室山ヨネ、渡部節子および藤田甫の各答申書

一、奥村栄助、宮川和市、亀田ミネ、細田あや子、鈴木好枝、佐々木満、横井静江、千野光昭、小松太郎、河内よし子および大平與吉の検察官に対する各供述調書

一、押収してある有限会社臨平商事定款一通(昭和三七年押第二三四号の一)、有限会社変更登記申請書一通(同号の二)、貸金業届出書一通(同号の三)、契約台帳二冊(同号の四)、金銭出納帳三冊(同号の五)、金銭消費貸借契約書一束四七〇通(同号の六)、同二九四通(同号の七)、金銭消費貸借契約証書四通(同号の八、一〇、一二、一四)、金円借用誓約書四通(同号の九、一一、一三、一五)

一、鑑定人佐藤信吉作成の鑑定書

判示第二の事実につき

一、被告人間辺平助の検察官に対する昭和三八年九月二〇日付(二通)および同月二四日付各供述調書

大蔵事務官の被告人間辺平助に対する質問てん末書五通

一、被者人間辺平助の上申書二通

一、相沢静、鶴見はる、岡本吉広、間辺節子、大塚ふみ、牧野正、久野チヨ、川瀬政一、高田菊弥、菊地菊太郎、岡田熊吉、間辺美佐子、鶴見桂子、須田喜一郎および菊地武利(昭和三八年五月二二日付)の検察官に対する各供述調書

一、相沢静、鶴見はる、岡本吉広、高田菊弥、小沢美喜江、菊地源太郎(二通)、岡田熊吉(三通)、関一郎(二通)、久野辰男、菊地武利(二通)の各上申書

一、大蔵事務官の間辺節子、大塚ふみ、久野チヨ、岡田熊吉、関一郎および菊地武利(二通)に対する各質問てん末書

一、大蔵事務官小林伊之助作成の「犯則所得調書について」と題する書面

一、同人作成の「犯則所得調書計算基礎資料について」と題する書面

一、株式会社住友銀行伊勢佐木町支店長作成の証明書二通

一、大蔵事務官小林伊之助作成の「住友銀行伊勢佐木町支店調査書類」と題する書面

一、同人作成の「横浜地方貯金局郵便貯金村田暁」と題する書面

一、横浜銀行杉田支店長荒井徳三郎作成の預金元帳写証明書

一、大蔵事務官小林伊之助作成の「横浜銀行杉田支店調査書類」と題する書面

一、同人作成の「日本勧業証券/横浜 間辺平助」と題する書面

一、大蔵事務官菊地正作成の有限会社臨平商事貸付台帳写

一、同人作成の有限会社臨平商事執行分入金帳写

一、押収してある債権差押及取立命令申請書綴一一冊(昭和四三年押第二九九号の一、四)、入金票綴二〇冊(同号の二)、貸付金カード一七冊(同号の三)、所得金額、法人税額の確定申告書一綴(同号の五)、建物売買契約公正証書正本一通(同号の六)、領収証八枚(同号の七ないし一四)、総勘定元帳一冊(同号の一五)、金銭出納帳一冊(同号の一六)、貸金台帳一冊(同号の一七)を総合してこれを認める。

(法令の適用)

一、罰条

(一)  被告人有限会社臨平商事の判示第一の各所為につき

出資の受入、預り金及び金利等の取締等に関する法律(以下「出資等取締法」と称す)一三条一項、五条一項同被告人の判示第二の所為につき

昭和四〇年法律三四号法人税法附則一九条、昭和三七年法律四五号による改正前の昭和二二年法律二八号法人税法五一条一項、四八条一項、五二条一項

(二)  被告人間辺平助の判示第一の各所為につき

出資等取締法五条一項

同被告人の判示第二の所為につき

昭和四〇年法律三四号法人税法附則一九条、昭和三七年法律四五号による改正前の昭和二二年法律二八号法人税法四八条一項五二条一項

二、刑種の選択

被告人間辺平助に関し判示第一の罪につき懲役刑を選択し、判示第二の罪につき懲役刑および罰金刑を併科する。

三、併合罪の処理(被告人両名)

(一)  被告人有限会社臨平商事につき

刑法四五条前段、判示第一の罪につき刑法四八条二項(罰金について合算)

(二)  被告人間辺平助につき

刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(懲役刑については重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

四、刑の執行猶予(被告人間辺平助)

刑法二五条一項

五、労役場留置(被告人間辺平助)

刑法一八条

六、訴訟費用の処理(被告人両名)

刑事訴訟法一八一条一項本文、一八二条

右の理由によつて主文のとおり判決する。

昭和四六年四月一〇日

(裁判長裁判官 上泉実 裁判官 田村洋三 裁判官吉田修は転任につき署名押印することができない。裁判長裁判官 上泉実)

別紙

〈省略〉

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